2019年07月03日

2018年度の設計住宅性能評価書交付件数は着工戸数の26.1%と過去最高に

 国が定める共通のルールに基づき、登録住宅性能評価機関が住宅を評価・表示する住宅性能評価制度。建築関係の知識が乏しい消費者からすれば、専門家が客観的に、全国共通の評価を行ってくれるので、たいへん便利な制度です。

●性能評価を行うかどうは任意の制度
 ただ、この制度、すべての住宅に義務づけられているものではなく、あくまでも任意の制度です。分譲住宅なら、分譲会社が性能表示を行うどうかを決め、注文住宅だと施主である消費者が住宅メーカーなどと相談して決めることができます。
 住宅の構造や規模などにもよりますが、この性能評価書を取得するためには、1戸当たり10万円から20万円ほどかかります。そのため、まだ十分には浸透していない面もありますが、それでもジワジワと増加しているのは間違いないようです。
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●性能評価書交付件数は25万戸近くに達する
 この住宅性能評価書には、設計図書の段階の評価結果をまとめた「設計住宅性能評価」と、施工段階と完成段階の検査を経た評価結果をまとめた「建設住宅性能評価書」があります。
 ちなみに、建設住宅性能評価書を取得していれば、引渡し後に欠陥が見つかったり、住宅メーカーなどとトラブルが発生した場合には、各地の弁護士会に設置された紛争処理機関に、1万円でトラブルの解決を依頼できるというメリットがあります。あくまでも、「設計」段階だけではなく「建設」段階の評価を受けていることが条件になります。

●19年3月はマンションが一戸建てを上回る
 国土交通省によると、2018年度に設計住宅性能評価書の交付を受けた戸数は24万9093戸でした。17年度の実績23万2062戸に対して、前年同月比で7.3%の増加になります。2006年度に25万戸を超えたことがありましたが、18年度はそれに次ぐ水準になっています。
 月別にみると、図表1にあるようにおおむね2万戸前後で推移しています。18年度最も多かったのは18年10月の2万2849戸で、逆に最も少なかったのは19年1月の1万6722戸でした。直近の19年3月は、マンションが一戸建てを上回りました。

●一戸建てがマンションの戸数をやや上回る
 18年度1年間の性能住宅評価書の交付実績を一戸建て、マンションの別でみると、一戸建てが12万8229戸で、マンションが12万2163戸でした。わずかですが、一戸建てがマンションを上回っています。17年度はマンションが12万3580戸、一戸建てが10万8482戸だったので、一戸建てがマンションを逆転したことになります。
 ただ、制度のスタートからの累計をみると、マンションが205万0190戸、一戸建てが136万3964戸とマンションのほうが一戸建てを凌駕しています。

●累計ではマンションが一戸建てを上回る
 2000年代に入った当初、新築マンションが首都圏だけで年間8万戸前後供給された時期があり、その頃、競合物件との差別化のために、この制度を利用するマンションが急増しました。
 しかし、現在では、マンションの新規販売数が当時の半分以下になっていることもあって、年度別では一戸建てに逆転されるような事態に至っています。
 とはいえ、制度スタートからの累計では以前からの貯金が生きて、まだまだマンションが優位に立っているわけです。
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●2年連続して着工に占める割合が過去最高を更新
 次に、この住宅性能評価制度が住宅建築のなかでどの程度の比重を占めているのか、その性能評価を取得している割合をみてみましょう。
 国土交通省によると、2018年度の新設住宅着工戸数は95万2936戸に対して、住宅性能評価書の交付実績は24万9093戸で、建設住宅性能評価書の交付実績が18万9245戸、既存住宅の建設住宅性能評価書の交付実績は312戸でした。

●17年度の24.5%から18年度は26.1%にアップ
 設計住宅性能評価書が新設住宅着工戸数に占める割合は26.1%に達します。図表2にあるように、これまでの最高は17年度の24.5%でしたから、それを抜いて過去最高の割合となっています。
 過去の推移をみると、リーマンショック前の07年度に21.0%と初めて20%を超えたものの、翌08年度は19.3%、09年度は19.1%に下がりました。それが、10年度には23.6%と再び20%台に乗せ、その後は20%台を維持し続けています。
 そのなかで、ここ数年は着実に交付割合が上昇しています。
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●既存住宅の性能評価書交付は伸び悩み
 この住宅性能表示制度、02年度からは既存住宅(中古住宅)にも適用されるようになりました。しかし、その実績は伸び悩んでおり、17年度の建設住宅性能評価書(既存住宅)の交付実績は352戸に対して、18年度は330戸と、前年同月比で6.3%の減少になっています。
 これまでの累計でも3926戸にとどまっています。国を上げて既存住宅市場の拡充につとめているのですから、その一翼を担う既存住宅の性能評価制度についてももう一段のメリット付与、制度に関する積極的な広報活動などを行う必要があるのではないでしょうか。



posted by ky at 09:04| 住宅性能

2019年02月05日

「住宅を断熱化すれば健康になる」を証明する全国調査の第3回中間報告会

 一般社団法人日本サステナブル建築協会は、国土交通省の補助事業「スマートウェルネス住宅等推進事業」の予算を得て、住生活空間の断熱性向上が居住者の健康に与える影響を検証する全国調査を行っています。2014年度からスタートし、毎年経過報告を行ってきましたが、2019年2月1日、東京都千代田区の「ホテル グランドアーク半蔵門」で第3回の中間報告会が開催されました。
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●政策に力を入れるための証拠集めが必要
 断熱性の高い住まいは環境にやさしく、光熱費の削減効果がある上、健康にもやさしいといわれています。
しかし、ほんとうに健康にいいのか、どういう影響があるのか、確たる証拠があるわけではないようです。一般的には、住まいの断熱化が健康を促進するものというイメージがあって、何となくそう思い込んでいますが、それは明確な証拠があってのことではないといわれれば、不安になってしまいます。
 国としても政策的に住まいの断熱化に力を入れるためには、確たる証拠がほしいということで、補助事業として全国調査に予算を出しているわけです

●断熱化が健康に推進することを証明する調査 
 中間報告会の冒頭、挨拶に立った国土交通省住宅局住宅生産課長・長谷川貴彦氏がこう語っています。
「現在でも、ヒートショックによって家庭内で多くの方が亡くなっています。16年の住生活基本計画の見直し時には、初めてヒートショックと住まいの関係について触れ、住まいの断熱化の重要性が付記されています。住まいの断熱化を促進するポテンシャルは高いわけですが、政策的に力を入れるためには、十分なエビデンスが必要です。日本サステナブル建築協会が実施している、『住宅の断熱化と居住者の健康の影響に関する全国調査』の結果がそれを後押しする要因になることを大いに期待しています」
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●寒い国ほど冬季死亡率率が低くなっている
 とはいえ、これまでも全くデータがなかったわけではありません。たとえば、イギリス保健省の2010年の年次報告では、図表にあるように、気温が低い冬季に死亡が増加する割合を国別に比較しています。
 その結果、意外にみえるかもしれませんが、ヨーロッパでも最も寒い国のひとつであるフィンランドでの冬季死亡増加率が最も低く、ドイツ、オランダ、デンマークなどの冬の寒さの厳しい国がそれに続いています。反対にポルトガル、スペインなど比較的温暖な気候の国々の冬季死亡増加率率が高いという結果になっているのです。

●寒い地域ほど断熱性能の高い住まいが多い
 これは、寒い国ほど住まいの断熱化が進み、温暖な地域では逆に断熱性能の高い住宅の普及が遅れているためといわれています。
 わが国にも同様のことがあてはまります。都道府県別にみた冬季死亡増加率は、実は北海道が一番少なく、次いで青森県、沖縄県、新潟県と続いています。沖縄県を除いて、寒い地域ほど冬に亡くなる確率が低いのです。反対に、比較的温暖な地域ほど、冬季死亡率が高くなっています。
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●住まい断熱化と健康の関係をより具体的に証明
 プロット図は冬季死亡増加率をタテ軸、断熱住宅普及率をヨコ軸にして、都道府県をプロットしたものです。結果、北海道、青森県、秋田県などの寒冷地の断熱住宅普及率の高いエリアでは冬季死亡増加率が低く、栃木県、山梨県、滋賀県など、比較的温暖な地域では断熱住宅普及率が低く、冬季死亡率が高くなっています。
 住まいの断熱化と冬季の死亡の多さについては、明確な関係があるようにみえます。こうしたことを、より具体的に証明していこうというのが、現在行われている全国調査の狙いといっていいでしょう。
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●住まいを断熱改修すれば血圧が下がる!
 第3回中間報告会では、さまざまな調査結果が報告されましたが、たとえば、住まいの断熱化の改修を行えば血圧が下がるという結果が出ています。
 図表にあるように、断熱改修した住まいに住んでいる人の起床時の血圧は、赤線にあるように改修前に比べて改修後には若干低下しました。一方、断熱改修していない住まいに住んでいる人の血圧は青線にあるように大きく上がっています。
 改修前と改修後では何年かの時間が経過していますから、その分血圧が高くなる可能性が高いわけですが、にもかかわらず断熱改修すれば血圧が下がっているのですから、効果は明確です。
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●住まいの断熱化でコレステロール値も下がる
 また、血中脂質について、断熱改修で温暖な住まいに住んでいる人と、断熱改修していない寒冷な住まいに住んでいる人を比較すると、温暖な住まいのほうがグラフにあるよに、総コレステロール、LDLコレステロールともに低くなることが分かりました。
 住まいを断熱化すれば、コレステロール値が下がることは明確であり、このほか睡眠の質と室温、入浴習慣と室温などさまざまな調査が行われ、有意な調査結果が判明しつつあります。
 来年か再来年には最終報告がまとまるそうですから、その報告を楽しみにしましょう。
概要は国土交通省ホームページをご覧ください。
★国土交通省ホームページ
http://www.mlit.go.jp/common/001270049.pdf




posted by ky at 08:56| 住宅性能